物理的な時計の針はいつも同じリズムで進んでいるのに、私たちの心の中の時計は、状況によって伸びたり縮んだりする…
そう聞くと、何を思い浮かべるでしょうか。
よくある話では、退屈な授業や会議はすごく長く感じるのに、焦っている時や楽しい時はあっという間に時間が経ってしまう。
誰もが一度はそんな経験をしたことがあると思います。
時計を気にすればするほど時間は長く感じられ、何かに没頭して時間を忘れると一瞬で過ぎ去ってしまうわけです。
心理学では、感じられる時間の長さが変わる理由として「時間経過への注意」や「身体的な代謝」など、いくつかの要因が知られています。
そんな時間の不思議を、私は最近、自分の身体を通して強烈に体験することになりました。
動悸の中で感じた、異様な時間の長さ
少し前に体調を崩し、理由のわからない動悸を抱えながら仕事をしていたときのことです。
とにかく、時間の流れが異様なほど遅く感じられました。
体感はすごく疲れていてしっかり働いている気がするのに、ふと壁の時計を見上げるとまだ数分しか進んでいない。退勤までの時間が果てしなく長く、苦痛に感じられたのです。(結局、早退を繰り返しました😅)
なぜだろう?と自分なりに考えて、最初はこう思っていました。
「心臓が速い分、心の中の時間のカウントも速く進んでいて、それに対して実際の時間は思ったほど経っていない。そのギャップが、時間の流れの遅さを際立たせているのでは?」
その後、甲状腺ホルモンが過剰であることがわかり、薬で心拍数を抑える治療を始めると、動悸はピタッと治まって楽になりました。
体内年齢が若返った?!
しかし、動悸は治まったのに、この「時間がゆっくり感じられる」感覚だけは変わらなかったのです。
これはもしかして……年をとるほど早く感じるようになっていた時間の流れが、病気のおかげでその感覚が巻き戻されたのでは? 体内年齢が若返った?!
体調不良のはずなのに、そう考えるとちょっとラッキーな気がしてしまいました。
ホルモンのイタズラだった
半分冗談のつもりで調べ始めたのですが、これが案外あながち的外れでもなさそうなことがわかってきました。ただし、「巻き戻った」というのとは、少し違う話のようです。
原因は、ホルモンのイタズラでした。
甲状腺ホルモンというのは、全身の細胞の新陳代謝を活発にし、エネルギーの産生や体温を調節する働きがあるそうです。つまり、動悸という「症状」の裏側で、体全体の代謝がぐっと亢進していました。
一般的に、若い方が代謝は高いというので、そういう意味では一時的に若返ったと言えます😅
(もちろん正常な状態ではないので、健康的な話ではないです)
そしてこの「代謝が上がっている」ということ自体が、時間感覚を狂わせる正体だったのです。
身体が燃えると、心の中の時計が加速して時間が長く感じる
日本心理学会の解説などによると、時間を感じる長さに影響を与える大きな要因のひとつに「身体的代謝」があります。
同じ長さの時間であっても、代謝が激しいときには時間は長く感じられ、代謝が落ちているときには短く感じられます。代謝が活発になると、脳や神経が時間を感じ取る基礎的なプロセス(体内時計の刻み)そのものが高速で動くようになるからです。
自分の中の時計が「1、2、3……10」と超ハイスピードで10カウント刻んでいる間に、実際の時計はまだ「5秒」しか進んでいない。 自分の中ではすでに10秒分の感覚を処理しているため、時計を見たときに「外の時間が進むのが遅すぎる(=時間が引き延ばされている)」と脳が感じるわけです。
これが、仕事が長く感じられたカラクリのようです。
でも、焦ると時間が短く感じるのはなぜ?
ここで、もうひとつの疑問が浮かびます。
今はまだ代謝が高くてゆったりした時間の流れを感じているはずの私でも、「この時間内に絶対に仕事を終わらせなきゃ!」と頭の中がタスクでいっぱいになった途端、久しぶりの「もうこんな時間?!」を味わうことになりました。
体内のカウントは同じように高速回転しているはずなのに、なぜこんな差が生まれたのでしょう?
ヒントは「時間経過への注意」にありそうです。
この感覚を引き起こしている主な要因は時間経過に対して向けられる注意であると考えられています。時間の経過に注意が向けられる頻度が高いほど時間がより長く感じられるのです。逆に,時間の経過に注意が向けられる頻度が低い場合や,時間の経過以外の事柄に注意が向けられる場合には,時間は短く感じられます。
https://psych.or.jp/interest/ff-36/より
焦って作業しているとき、私たちの意識は時間の経過よりも、「今やるべきこと」に向けられています。さらには、「間に合わない」「次にあれをやらなきゃ」と、次々とタスクを思い浮かべています。
どれだけ身体というハードウェアが超高速で時間を細かく刻んでくれていても、脳のソフトウェアがやるべきタスクで忙殺されていると、時間は一瞬で溶けて消えてしまう。 物理的な体の働きよりも、心理的な意識の働きのほうが勝ってしまうこともあるのかもしれません。
私たちのココロと時間
そこで私は時間がすごく長く感じる、あるシーンを思い出しました。
例えば、苦手なプランクを1分間。
できたことがありません。この1分間がすごく長く感じるんです。
・運動をすることで代謝がアップしていること。
・さらに、早く終わって欲しくて何度も時計も見てしまうこと。
前述してきた、時間が長く感じる条件を2つとも満たしていますね、苦手な運動は長く感じて当たり前だったんですね…
そういえば、運動をしていて時間があっという間に感じたことはないかもしれません。(笑)
今回、代謝という自分ではなかなかコントロールできないものが、時間の感覚に関わっていたことを知りました。
しかし、私たちが物事をどう見たり、捉えたりするか、それもまた大きな要因であるのだと、改めて気付かされました。
自分のココロの癖を知ると、時間の使い方も変わるかもしれません。
これを読んだ皆さんも、ぜひ考えてみてくださいね。
※本記事は個人の体験に基づくエッセイであり、医学的な解説ではありません。体調不良や気になる症状がある場合は、自己判断せず医療機関にご相談ください。


