深夜の相談室:疲れるとわかっているのにやめられない
こんばんは。
ココロノコエ深夜の相談室パーソナリティ、アリアです。生きづらさを感じる日々の中で、少しでも心が楽になるような、そんな言葉を、今夜もそっとあなたに。
さて今夜は、ラジオネーム「つい見ちゃうんです」さんからのお便りをご紹介しましょう。
「いつも楽しく拝聴しています。私は、人の愚痴やSNSでのトラブル投稿、見るのは疲れるってわかっているのに、なぜかやめられません。気づけばスマホをスクロールしていて、後で自己嫌悪に陥る日々です。どうすればいいでしょうか?」
お便り、ありがとうございます。
「つい見ちゃうんです」さん、お気持ち、とてもよくわかります。
頭では「イライラする」ってわかっているのに、なぜか自分から不快な情報に触れにいく。まるで中毒みたい。
実はですね、この行動の裏には、私たちの脳が持つ「報酬系」という仕組みが深く関わっていると言われているんです。
なぜ、私たちは「不快」に惹かれるの?
脳って、「おいしい!」って感じたときや、誰かに褒められたとき、達成感を得たときに、「ドーパミン」という物質を出すんですって。
これが「この行動は気持ちいいな!もっとやろう!」ってモチベーションになる。これが「報酬系」の基本的な働きです。
でもね、この報酬系、実はポジティブなことだけに働くわけじゃない。
私たちの脳は、「新しい情報」や「感情が大きく揺さぶられる情報」にも、強く反応するようにできているんです。
例えば、SNSで誰かがトラブルを起こしていると、「炎上」っていう強い刺激があるでしょう?
それを脳は「新しい、重要な情報だ!」って認識しちゃうんですね。
ハラハラ、ドキドキ…ドーパミンループの正体
ジョンズ・ホプキンス大学医学部教授デビッド・J・リンデン博士(※)がこんなことを言っているそうです。
「脳は不確実なことを解決しようとするときに、ドーパミンを出す」と。
「このトラブル、これからどうなるんだろう?」っていうハラハラ感や、「この愚痴、どういう展開になるんだろう?」っていう、先の読めない状況。
私たちは、その答えを知りたくなって、つい次の情報を求めてしまう。
そして、この「情報を得ようとする行動そのもの」が、実は脳に小さな快感をもたらしているんです。
「この先どうなるの?」って気になってSNSをスクロールするたびに、少しずつドーパミンが放出されている。
さらに言うなら、不快な人間関係から逃れられないのも、この不確実性が影響していたりするんですね。
また私たちは、他人の愚痴やトラブルに関わることで、「優越感」や「共感」という形で、心の報酬を得ることも。
「あの人はかわいそうだな」と寄り添ったり、「自分はこんなことで悩まないな」って、ほんの一瞬ですが、自己肯定感が満たされたりする。
これが、「イライラする」とわかっているのに、つい関わってしまう心理の正体なんです。
※補足すると・・
- David J. Linden, Ph.D.『The Compass of Pleasure: How Our Brains Choose What We Want–and Why』 (邦題:『快楽のコンパス―私たちの脳は、なぜこれを選び、あれを欲するのか』)
この書籍の中で、リンデン博士は、不確実性の解消がドーパミン放出につながること、そしてそのメカニズムが、ギャンブルやSNSなどへの依存につながる可能性があることについて解説しています。
そのエネルギーを、「あなた」を満たす時間に変えませんか?
でも、この「不快な情報」から得られる報酬って、一瞬だけなんですよね…
その後に残るのは、モヤモヤとしたイライラや、不安、自己嫌悪。心にも体にも大きな負担がかかる。
さて、ここまでわかったら、その「負のドーパミンループ」に注いでいるエネルギーを、あなたが本当に満たされる行動に切り替えてみませんか?
今すぐできる、3つの「心のリセットボタン」
「よし、今日からやめるぞ!」って意気込んでも、ついついまた同じ行動をしてしまうのが私たちです。だから、無理なくできる「切り替えスイッチ」を用意してみましょう。
脳をだます「ご褒美の上書き保存」
身近な人間関係だったり、SNSの投稿だったり、イライラしながらも追いかけてしまう時には、あえて好きなドラマを1話だけでも、観てみませんか?
人のトラブルやどうでもいい情報を追うよりも、あなたが「見たい」と思うストーリーで、脳のご褒美を上書き保存するんです。そうすれば、脳は「不快な情報」よりも、「心地よい物語」を求めるようになります。
強制的に意識を変える「フィジカル・スイッチ」
考えるより先に体が動く、こんなスイッチも有効です。
例えばスマホを「えいっ!」とクッションに放り投げて(モヤモヤする気持ちを放り投げるイメージをするだけでもいいです)、その場でジャンプを20回してみましょう!
たったこれだけですが、体を動かすことで思考が強制的に中断され、不快な情報への執着から意識をそらすことができます。心にたまったモヤモヤを、ジャンプの反動と一緒に外に出しちゃいましょう。
自分と向き合う「心のGPS」
最後に、自分自身に語りかけるという方法です。
「これを見ても(聞いても)得るものはない。今の私に必要なものは何?」と、心の中で、あるいは声に出して自分に尋ねてみてください。この問いかけは、あなたの意識を「何を見るか」から「何をすべきか」へと切り替えるためのコンパスになります。本当に自分を満たしてくれる行動は何か、脳が答えを探し始めるはずです。
おわりに
「もう関わるのやめたいのに、つい関わっちゃう」っていう気持ちは、とても正直で、あなたが自分自身を大切にしたいと願っている証拠。
あなたが持つ貴重なエネルギーを、自分を癒し、満たすための糧に変えられたとき、その願いは叶い、心は静かで穏やかになっていくはず。
今夜もあなたの心が、ほんの少しでも軽くなりますように。
ココロノコエ深夜の相談室、お相手はアリアでした。
それでは、また。


