はじめに。
この記事は、特定の症状を診断したり、治療法を推奨するものではありません。記載の内容は、筆者の個人的な経験と、公開されている一般的な情報に基づく考察です。明らかな心身の不調や、長期にわたる意欲低下がある方は、この記事を参考にせず、必ず医療機関(心療内科、精神科など)へご相談ください。
自力で回復可能な方を対象とした、一つの視点の提案です。
SNSで目にする「ドーパミン中毒」のモヤモヤ
「ドーパミン中毒」。
医学的に正しい用語ではないと知りつつも、多くの方がこの言葉に共感するのは、「やるべき高コストなことが手につかない」という、現代の生きづらさを的確に表しているからかもしれません。
つい手軽に、即座に快感が得られる行動(SNSのスクロール、動画視聴など)を選んでしまう。その結果、時間だけが過ぎていき、本来の目標達成に向けた「やる気」がどんどんしぼんでいくような感覚。
なぜ、私たちはこんなにも「ダラダラ」してしまうのでしょうか。
以前、当ブログで「なぜ、不快な情報に惹かれてしまうのか」というテーマを考察しました。その中でドーパミンが報酬となり、つい見続けてしまう、と解説をしました。
ところが実は、ドーパミンは快感そのものよりも、むしろ「行動を促す意欲」や「目標達成のためのモチベーション」に関わる部分が大きいのだそうです。
1986年に学術誌「Journal of Neurophysiology」に発表された論文で、食べ物やその他の報酬を受けたときに脳がこの物質を放出していることが示された結果、ドーパミンには楽しい気分を仲介する役割があるという考え方が広く受け入れられた。
しかし、1990年代から2000年代初頭にかけて、これを否定する証拠が次々に出てきた。ドーパミン系を遮断した動物でも、報酬を受け取ったら同じように喜ぶことが明らかになったのだ。その一方で、もっと手に入れようとするやる気が完全に失われることもわかった。
※詳しくはこちらの記事をご覧ください
🔗「ドーパミン=快楽」ではない? ネットやSNSで誤解も(日本経済新聞)
そう考えると、この無気力なダラダラから抜け出すためによく言われるような、「筋トレ」「運動」「デジタルデトックス」といった、行動を変えるアプローチ。
これらは有意義なことですが、それを実行するにもドーパミン(=やる気)が必要ということになります。
この「手軽に得られる低コストな快感への依存」は、高コストなことに手間をかけたくないほど、疲れてやる気が出ない状態だとしたら?
やる気の原料そのものが、知らず知らずのうちに慢性的に不足しているとしたら?
今日は、この「やる気の低下」を、体内の原料不足という物理的な問題からも捉える新しい視点について、慎重にお伝えしたいと思います。
ドーパミンが快感そのものではなく、「行動を促す意欲」に関わる物質だと考えると、私たちの「ダラダラ」がなぜ起こるのかが見えてこないでしょうか──
ドーパミンのバランスは「意欲」に影響を与える可能性
まず、ドーパミンの体内での働きを見てみましょう。
ドーパミンは脳の活動を司るため、その量が極端にバランスを崩すと、身体に顕著な、病的なサインが現れます。
例えば、ドーパミンが不足した状態は、うつ病やADHD、パーキンソン病といった病気に関係していると考えられています。これらの病気では、ドーパミンの不足や働き方の偏りによって、意欲や楽しみを感じる力の低下、集中力の欠如といった形で症状が現れます。
逆に、過剰な状態では、統合失調症の急性期のように幻覚や妄想、過覚醒状態に関与していることが知られています。
※詳しくはこちらをごらんください
📎ドーパミンとは|働きや不足で起こる病気・増やす方法を解説(マイナビ看護師)
これらはあくまで、病的な状態における大きくバランスを崩した例であり、今回私たちが話題にしている「ダラダラしてやる気が出ない」という状態とは、明確に一線を画します。
しかし、これらのバランスを崩した例が示すのは、ドーパミンのバランスが崩れると「意欲」が大きく影響を受けるという事実です。特に、意欲の低下や無関心といった精神症状は、ドーパミンの不足が関与する病気において広く知られています。
無気力な人に不足しているのは、実はこの成分
次は、ドーパミンから離れ、「無気力」という状態を別の角度から見てみます。
「メンタルの不調にはプロテイン(タンパク質)がいいよ。」
「いや、鉄分がいいよ。」
など、どこかで目にしたことはないでしょうか。
実はこれ、ちゃんと理由があるんです。
「行動を変えたいのに、なぜか意欲が湧かない」といったメンタルの不調を抱える人々に、ある特定の栄養素の不足が共通して見られることが指摘されています。
それが、先ほど挙げたタンパク質や鉄分です。
特に鉄分は、全身のエネルギー代謝や酸素運搬にも関わるため、不足すると「意欲の低下」や「強い疲労感」といった症状を引き起こすことが広く認識されています。また、タンパク質が不足すると、集中力ややる気の低下を招きやすくなることも指摘されています。
※詳しくはこちらをご覧ください
📎集中力を高める脳の栄養とは?やる気が出ない原因は脳疲労かも(大正製薬)
「やる気の低下」は、心の持ちようというよりも、まず身体の内側の栄養状態が大きく関わっている。私たちは、この客観的な事実に目を向ける必要があります。
ドーパミン生成に必要な「やる気の原料」
- タンパク質(アミノ酸)
- ドーパミンの原料となるチロシンは、タンパク質が分解されて作られます。大正製薬のコラムでも、タンパク質が不足するとドーパミンなどの神経伝達物質がつくり出せなくなり、集中力ややる気の低下を招きやすくなると指摘されています。
- 鉄分(ミネラル)
- 鉄分は、ドーパミン生成の過程で働く酵素の補酵素として非常に重要な役割を担っています。鉄が不足すると、ドーパミンの生成そのものがスムーズに行えなくなり、意欲の低下や強い疲労感といった症状を引き起こすことが知られています。
- ビタミンB群
- 特にビタミンB6や葉酸、ナイアシンなどはドーパミンを合成する過程で不可欠であり、不足するとセロトニンやドーパミンの減少による集中力の低下が現れるとされています。
つまり、タンパク質や鉄分などの必要な栄養が不足している状態は、「やる気を出すためのガソリン(原料)がない」状態と同じです。
この原料不足こそが、私たちに「やる気が出ない」「面倒くさい」と感じさせている、行動以前の根本的な問題ではないでしょうか。
「食べるもの」を整えるという新しい選択肢
多くの方が「筋トレ」「運動」「デジタルデトックス」といった「行動を変えるアプローチ」を試みると思います。
かく言う私もそうでした。
なんとなく心も体も重い、こんなんじゃダメだ!喝を入れよう!と、いきなり公園をウォーキングなどして、どっと疲れて動けなくなって後悔したり・・・その後、病院を転々とするうちに、成り行きで鉄分やタンパク質を意識するようになり、気づけば活動的な生活に戻れていました。
今思えば、身体の原料が枯渇している状態で、いきなり高コストなタスクに挑戦するのは、非常に難しいことだったんだ、と思えます。
なぜなら、原料が不足している体には、その「やる気」を物理的に生み出す力がないからです。
だからこそ、「食べるもの」に意識を向けるという「身体の内側を整えるアプローチ」は、生きづらさを感じる私たちにとって、非常に優しく、行動変容の「土台」を整える選択肢となり得ると思い、今回このテーマを選びました。
行動を変えるのが難しいと感じているなら、まずはドーパミン(その他もろもろ)の原料であるタンパク質、鉄分、ビタミンB群を意識的に補給することで、身体の内側を整えるところから始めてみてはいかがでしょうか。
参考サイト
この記事の内容は私が自分なりに組み立てて考えたものですが・・
参考サイトを探していると、全てそこに書いてあることに気づきました🤣





